三次貨物運送(細川喜一郎社長、広島県三次市)は、健康経営を強化する。これまで社内自動販売機2台で販売する飲料のカロリーを表示して社員に無糖飲料の購入を促してきたが、7月からは無糖飲料全般の販売価格を引き下げ、缶のブラックコーヒーは現行の100円から50円にする。また労災上乗せ保険の補償内容も充実させ、社員が安心して長く働ける職場実現への取り組みを加速させる。
健康経営優良法人認定制度が創設されたのは2016年で、同社は同年に認定を取得。健康経営で遅れていると言われる中小企業部門で先進的な取り組みを実践してきた。
細川社長は「運送会社にとって困るのは、社員が急に休むこと。認定取得以前も年2回の健康診断や有所見者の再検査を徹底していたが、対策は不十分との思いがあった。アクサ生命保険(安渕聖司社長兼CEO=最高経営責任者、東京都港区)から健康経営優良法人認定の話を聞き、趣旨に賛同して取得し、更新を重ねてきた。大事なのは社員だけでなく、家族も含めた健康管理だ」と語る。
具体策として、給与明細書に健康管理のポイントを記載したアクサ生命のチラシを同封。家族の健康意識向上に努めてきた。
自販機のカロリー表示も当初からの対策で、社員の健康意識が向上し、無糖飲料の売れ行きは他の商品より好調という。無糖飲料の価格は既に一般より割安にせっていしているが、7月からはお茶やミネラルウォーターも価格を引き下げる。社内自販機で缶のブラックコーヒーを50円にするのは全国的にも珍しいという。損失が発生するが、福利厚生費として会社で負担する。
一方、労災上乗せ保険は業務上の災害のみを補償する商品を契約していたが、8月から社員がプライベートの時間に負ったけがや病気も補償するものに切り替える。また、秋をメドにインフルエンザ予防接種の費用を会社で全額負担する制度もスタートさせる。
細川氏は「今後の課題は禁煙対策。分煙や場内禁煙はできても、トラックの乗務中は把握できない。インセンティブを与えて禁煙を促す方法は良くないと言われており、効果的な対策を検討中だ」と話す。
また、「昔は業績が良く、利益を残すことが良い会社の基準だったが、今は社員のことをどれだけ真剣に考え、いかに職場環境改善に努力するかが重要。経営者の考え方を時代に合わせて変えていくことが社員や顧客の満足度にもつながる」と強調する。
(江藤和博)
